下北沢シェアハウスエピローグ(怪談)

エピローグ

数ヶ月前まで、そこには古びた一軒家が建っていた。
若者向けにリノベーションされたシェアハウス──“だった”場所。

今は新築マンションが立ち、白く光る外壁に、引っ越し業者の出入りが続いている。


工事用フェンスの端に、1枚の張り紙が風に揺れていた。

尋ね人:20代前半の女性。白いブラウス着用。
最終目撃:昨年秋、下北沢周辺。
些細な情報でもご連絡ください。

白黒の写真は薄く滲んでいて、顔の輪郭ははっきりしない。
だが、どこか──誰かに似ていた。


その日、敷地内の配管工事中。

重機の音が止まり、現場に短い沈黙が訪れた。

穴の中から、ひとりの作業員が顔を出す。
土にまみれた手に、何かを握っていた。

彼が、少し驚いたような顔でつぶやいた。

「……おーい、こりゃ──人の骨じゃねえか?」

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